― “信頼の証”という言葉の落とし穴 ―
「業務が増えるのは、信頼の証だ。」
そう言われることがある。
確かに、頼られることは嬉しい。
任されることは、評価の裏返しでもある。
しかし、その言葉をそのまま受け取ってよいのだろうか。
臨床工学技士(CE)は、
医療機器の専門職として制度化された職種である。
本来は、
医療機器の安全管理、
ライフサイクル管理、
適正運用の設計を担う存在だ。
だが現場ではどうだろう。
「とりあえずCEに聞こう」
「時間が空いているならお願いできる?」
「詳しいからやってもらえる?」
その積み重ねが、やがて“何でも屋”を生む。
業務が増えること自体が問題なのではない。
問題は、それが“設計”されていないことだ。
頼まれた仕事を引き受けるたびに、
専門性の境界は曖昧になり、
本来担うべき管理機能は後回しになる。
信頼とは、
役割が明確であるからこそ成立する。
境界が曖昧なまま広がる業務は、
信頼ではなく依存に近い。
CEが本当に担うべきなのは、
「何でもやること」ではない。
“やるべきことを定義すること”である。
業務を増やす前に、
業務を設計する。
役割を広げる前に、
責任を明確にする。
それがなければ、
どれだけ努力しても持続可能な組織にはならない。
Why-T?
私たちは、
「信頼の証」という言葉に安心して、
専門性の境界を手放していないだろうか。